
本展は、制作の過程における救いと夢中をテーマに、人間の内的対話や社会との関係性を見つめ直す展示です。
「予祝」とは、豊作を祈って、一年間の農作業や秋の豊作を模擬実演する行事。農耕儀礼の一つとして行われることが多い。あらかじめ期待する結果を模擬的に表現すると、その通りの結果が得られるという俗信にもとづいて行われる。
これらの概念は、岡本の作品における即興性と現在の移り変わりの尊さに通じています。本展では、孤独がもたらす創造性と、描く行為そのものが生む救済の瞬間を彼のアートと共に体感する場を提供します。
彼が語る「描いている時には夢中で救われる」という感覚は、作品の根底にある力です。孤独の中で自己と向き合い、内なる世界と語り合いながら紡ぎ出される即興的な線や色彩は、観る者に直接的な感情を伝えます。これらの作品は、完成された成果物でありながら、制作過程そのものが持つ“予祝“のエネルギーを強く感じさせます。それは彼のアーティストとしてのキャリアにおける現在地にも思わせます。
彼の制作スタイルには、即興性が大きな役割を果たしています。ジャズのような自由なリズムや予測不能な展開が好きだという彼の嗜好は、絵画のダイナミックな筆致や予期しない構図にも反映されています。変化し続ける現在の瞬間を捉え、その時々の感情や直感に従うことで生まれる作品群は、瞬間の尊さや儚さを感じさせながら、作品に落とし込まれていきます。
岡本のアートには、個人としての孤独と、社会との関係性への問いが込められています。周囲に人がいても「同志がいない」と感じる彼の孤独感は、現代社会が抱える共通の課題でもあります。しかし、その孤独は創作において豊かな内的対話を生み、作品の中で自己と語り合う時間を生み出しています。観者は、彼の作品を通じて、孤独が持つ創造の力や、社会との新しい繋がり方を見つけるきっかけを得ることを願います。
展覧会名 予祝 yoshuku
会期 2025.2.1〜2025.2.28
会場 恵比寿ガーデンプレイス TSUTAYA BOOKSTORE
アーティスト 岡本ビショワビクラムグルン