赤羽 由衣
Yui Akaba
人はそれぞれ、マイナスの感情を持っている。 マイナス感情とは反抗や個人的な悩み、人には話したくない複雑な感情である。
それらマイナス感情が少しでも前向きになれるよう、 自身の絵画を通して、その瞬間の印象と情景の記憶を「改ざん」したい。
◯なぜ改ざんするのか マイナス感情が生まれた悲しい出来事があったとして、そこから離れるには、二つの方法があると考えた。
一つ目は何かに没頭することや旅行をしたりして忘れること。
二つ目はマイナス感情自体を別の感情に変換させること。
前者は現実逃避で本来のマイナス感情との問題と向き合うわけではなく、根本的な解決にはならない。
後者はマイナス感情を無くすのではなく「少し」書き換えるということである。 悲しいものを悲しいままにしていると今は隠せても、いつか思い出した時に同じ温度で悲しくなるのではない か。そのためにマイナスの感情と向き合い、過去を絵画で変換する行為によって、負の記憶ではないものに錯 覚させると、思い出した時にも悲しさが和らいでいる。
◯なぜ「改ざん」したものを伝えるのか
理由は2つある。
1つは、言葉に変換する時点で既に感情とはズレが生じている。 言葉はあくまで伝えるための一つの手段、代用でしかないからである。 ならば初めから、この感情や情景の記憶を鑑賞者に全て伝えることにはこだわらない。
2つ目の理由は、たとえ自分自身が悲しくてマイナスの感情を持っていたとしてもそのマイナスという部分を 人には感じ取られたくない。もしくは人によく見られたいと思ってしまうからだ。 これは現代のSNS社会がそうさせていると思う。インスタグラムやTwitter上にいる友達や知り合いには、私たちは楽しい旅行の写真や高そうなご飯、加工されフィルターがかかった綺麗な部分しか見せない。そればかりを蓄積させて並べると、それがその人の全てであるように。
改ざんさせた綺麗なものばかりを他の人間 (鑑賞者)に見せることで自分を保つことができるためである。
絵に変換することによる「改ざん」から現れる新しい解釈と、それを鑑賞者に伝えることは、私のマイナスの感情を昇華させるのだと考えている。