クワバラの作品には、言葉にならない感情の層が静かに重なっているようにも見える。描かれる人物は、はっきりとした感情を示さず、淡い光と影のなかに佇んでいる。その様子は、かつて象徴主義の画家たちが描いた内面世界のようでありながら、より身近な心情や日常の揺らぎにも触れているように思える。

作品に差し込む光は、劇的というよりはむしろやさしく、視覚だけでなく、触覚や記憶を刺激するような質感を帯びている。その光が、観る者の内側にある静かな感情の部分と響き合うこともあるかもしれない。

明確な物語を語るのではなく、鑑賞者それぞれの経験や感覚によって完成されるような余白が、画面に漂っている。本展が、見る人のなかにある静けさや光への感受性を、そっと引き出す場になるとすれば、それは作品に宿る何かによるものかもしれない。