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部屋の中には、絵画が一枚。それだけで空間の雰囲気が変わること、特別なものではなくても、壁に何かが掛かっているだけで、部屋の居心地は少し変わります。

この展覧会は、そんな「日常の中でアートが存在する心地よさ」に焦点を当てたものです。ギャラリーの白い壁ではなく、カウチと暖炉のある部屋で、ただゆっくりとくつろぎながら作品と向き合うように、ただそこにあって、視界の片隅に入り込み、気づいたら眺めているような、そんな距離感を大切にした展示空間を作り出します。

 

「見る」という行為は、実は極めて不確かなものです。西洋美術史の中で「視覚」は長く真実の証明手段とされ、遠近法や光と影の技法によって世界は客観的に再現されるものと考えられてきました。しかし、20世紀以降のアートにおいて、「見えているものが真実なのか?」という問いは、マグリットの「イメージの裏切り」や、ジョン・ケージの「沈黙の音楽」といった、知覚を問い直す実験の中で何度も繰り返されてきた。

家田実香の作品もまた、視覚の持つ曖昧さを想起させます。アクリル絵具とメディウムの層が織りなすテクスチャは、単なる物質ではなく、光や時間と相互作用しながら変化します。色彩の境界線は確定されたものではなく、視線の動きによって流動し続けます。

 

家田の作品は、目を凝らすほどに奥行きを増していきます。幾重にも塗り重ねられた絵具の層が光を受けて微妙に変化し、作品ごとに異なるリズムを持っている。その表面は時に滑らかで、時にざらつき、視線を留めたり、流したりすることで、違う表情を見せます。

今回初出展となるドローイング作品も、その軽やかさが特徴だ。ペインティングのような重量感ではなく、ふとノートに走らせた線のように、自然体のまま存在している。どの作品も、部屋の中で静かに呼吸するような存在感を持ち、特別な鑑賞の仕方を求めません。

暖かい部屋の中で、カウチにもたれながら、一枚の絵を眺める。そんな日常の延長にあるような展覧会です。

 

 

作家談

 

不意に目にしたものが、今後の自分を助けてくれる事がある。読み聞かせてもらった物語、何気なく聴いた音楽、昔見たアニメ、授業で習った専門用語。ただ楽しいだけのものにさえ救われる事がある。〆切前にシャワーを浴びていたら昔の自分が助けに来た事が何度もあった。霧が晴れるように脳内が明るくなりアイディアの星座が輝きだした。まるでeurekaのよう。たしかあれもお風呂で叫んだ話だった。

もしかすると今この場所が貴方にとってひらめきの場になるかもしれない。ここにある作品たちは全てひらめきの先を象っている。

展覧会名           Room with a painting

会期                 2025.3.2〜2025.4.5

​会場           恵比寿ガーデンプレイス TSUTAYA BOOKSTORE

​アーティスト     家田 実香

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